もっと金を集める為に俺はヤバイ仕事もするようになった。
そこは会員制のショットバー。あまりカタギの人間が集まるような店ではない。そこでバーテンの仕事と、時には用心棒として働いた。
時給が高かったので、毎月かなりの額の金を受け取ることが出来る。やがてついに目標金額に到達した。
これで借金も返せるし、ヤクザの情婦もやめることが出来るはず。
俺はその時まで女を信じて疑わなかった。
けれどそれは全て女のついた嘘だった。いや、正しく言えばヤクザの情婦ってのは真実だった。女は俺が金をため込んでいるのを知っていて、まんまと騙したのだ。そして無一文になった俺は女に言われた。
『あんたみたいに騙しやすかった馬鹿は初めてよ』
いつか将来、自分の店を持つために貯めておいた金が一瞬で奪われた。
そのショックで数日後、朝目覚めたときに目が全く見えなくなっていた。
医者が言うには強いショックを受けて一時的に目が見えなくなってしまっただけだと言う。
視神経には異常が無いので大丈夫? ふざけるな! 俺はシェフだぞ!? 目が見えなくなったら料理なんか作れるはず無いじゃないか!
当然店はクビになってしまった。働き口なんかどこにもない。お金は底を尽きた。スマホは解約、光熱費が払えずストップ。そしてアパートも解約せざるを得なかった――
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俺はウィークリーマンションの一室にいた。手元には睡眠薬が入ったビンと水の入ったペットボトル。何もかも失って、もう生きる希望も何もない。今夜この部屋で俺は自分の人生を終わらせる。
大量の錠剤を口に開けて水と一緒に飲み干す。それを何回も繰り返して薬瓶は空になった。俺はそのまま大の字になって床に寝そべって目を閉じる。
もうこの暗闇の世界とはおさらばだ……徐々に瞼が重くなって、俺は深い眠りに着く……。
≪ねえ、その身体いらないなら僕にちょうだい≫
突然誰かが話しかけてきた。
≪誰だ、てめえ。ふざけるな! これは俺の身体だ。誰にもくれてやるものか≫
≪だっていらないから自分で死のうとしたんでしょう?≫
答えにつまる。
≪どうして死のうとしたの?≫
この人物になら俺の素直な気持ちを告白てもいいかなという気持ちになった。
≪俺は……酷い裏切りにあったショックで目が見えなくなった。医者は何とも無い、精神的ショックが治れば目も見えるようになるって言うけど、そんなの信じられ